WORDSWORTH, RAWNSLEY AND LAKE DISTRICT

コロナウィルス危機で影が薄く感じられるものの、2020年はイギリス湖水地方にとって重要な年。ウィリアム・ワーズワース生誕250周年であり、またハードウィック・ドラモンド・ローンズリー没後100周年という記念の年だ。ワーズワースは周知の通りロマン派を代表する桂冠詩人、一方ローンズリーは英国国教会牧師であり、ナショナル・トラスト創立者の一人。二人はまさに湖水地方の自然美を護った環境保護の先駆者だった。この記念すべき年を祝して、英国芸術協議会より緊急事態対応基金の助成を得、新たなアートプロジェクト『Wordsworth, Rawnsley and Lake District』に着手した。 

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 ロナウィルス危機で影が薄く感じられるものの、2020年はイギリス湖水地方にとって重要な年。ウィリアム・ワーズワース生誕250周年であり、またハードウィック・ドラモンド・ローンズリー没後100周年という記念の年だ。ワーズワースは周知の通りロマン派を代表する桂冠詩人、一方ハードウィックは英国国教会牧師であり、ナショナル・トラスト創立者の一人で、環境保護の大切さをビアトリクス・ポターの心に焚きつけたその人。ビアトリクスはその死に際して、16の農場、多くのコテージにハードウィック羊の群れを含む飼育していた家畜のすべて、そして4000エーカーに及ぶ私有地をナショナル・トラストに遺贈した。ところで、ワーズワースが湖水地方の環境保護を訴えた最初期の活動家であったことはつとに知られている。ワーズワースが逝去した翌年、あたかも詩人の情熱を受け継ぐかのようにハードウィック・ローンズリーが生を受けた。二人は紛れもなくイギリス湖水地方、そして世界の環境保護活動の先駆者であった。現代社会において、その声はより大きくこだましている。

 

この重要な年を記念して、再び英国芸術協議会より助成を得、本アートプロジェクト『Wordsworth, Rawnsley and Lake District』に乗り出した。前プロジェクト『Conversation with Ruskin』で高評を得た複視画様式を採用し、この二人の肖像画の制作に取り組んでいる。一方は、レイ・キャッスル城付き教会(アンテオケの聖マーガレット教会)の牧師として働いていた1882年当時、レイ・キャッスルに家族で避暑に来ていた若きビアトリクス・ポターに出会い、環境保護の大切さを熱く語ったハードウィック・ローンズリーを、他方は妹ドロシーとダヴ・コテージに移り住んだ頃、自伝的長編詩『序曲』の執筆を始めた時期でもある20代末のウィリアム・ワーズワースを描く。

二人は紛れもなくイギリス湖水地方、そして世界の環境保護活動の先駆者であった。現代社会において、その声はより大きくこだましている。

巡回個展プロジェクト『Conversation with Ruskin』で制作したジョン・ラスキンの肖像画『Conversation with Ruskin (Ecce Homo)』のコンセプトを踏襲し、この二人の歴史人物を二つの同一肖像を平行軸にオーバーラップさせた複視画として完成させる予定だ。同一肖像間の距離を綿密に計算して丹念に描き上げることで、鑑賞者に錯視を促し、あたかも単一の肖像画像がサポートから浮上して見えるような効果を狙うものだ。脳の錯視効果を狙うという、一見逆説的な試みだが、それを通して可視・不可視、物質・霊魂といった、人間のみが持つ抽象概念の間にある隔たりについて問いただし、人間の心/魂/霊は存在するのか、あるいはそれは単なる人間の脳の電気的・化学的プロセスに過ぎないものなのかという問いかけを俎上に載せることを試みる。現代が孕む自然環境および人間の存在論的危機を前に、湖水地方からあまねく世界に呼びかける守護者として描くことに努める。作品はドローイング2点、絵画2点、光の照射方向を逆に描くことで、展示の際に肖像の頭上高く同一の光源から光が差し込むように見える展示形式を構想している。

英国芸術協議会より緊急事態応答基金の助成を授与され、更なる完成度を目指して励んでいるが、ドローイングを除いて肖像画はすべて、日本の墨とアクリルを併用した独自の線描技法を駆使して完成させる。この線描技法は、初期ルネッサンスのフィレンツェ画派が創作の基としたディゼーニョの方法論に着想を得、ヒトの視覚脳の認知プロセスは概ね線的記号として処理されているという現代脳科学的知見をもとに独自に開発したもので、過去15年以上にわたりこの技法の卓越に励んできた。背景は、襖絵や屏風絵に見られる日本の伝統美術様式をインスピレーションとして、すべてアクリル・ゴールドで統一、自身の日本人としての文化的ルーツを反映させる。こうして、世界的な危機にもかかわらず、否むしろそうであるからこそ、歴史に大きな足跡を残したイギリス湖水地方の二人の人物の事績を称え、その栄誉にふさわしい作品の創作に励んでいる。

Arts Council England

イギリス湖水地方在住の日本人美術家 | JAPANESE ARTIST IN THE ENGLISH LAKE DISTRICT | UNITED KINGDOM

Hideyuki Sobue's Portfolio | Copyright © 2020 Hideyuki Sobue. All rights reserved.

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